2018年09月26日

お父さんのハイフライフロー『パパはわるものチャンピオン』



 新日本プロレスを変えた男、棚橋弘至が覆面レスラーを演じた初主演作。
 大村孝志(棚橋)はかつて善玉のスターだったが試合中のケガで善玉の試合はできなくなってしまい、今は覆面をかぶってゴキブリマスクなるヒールとして善玉の引き立て役をこなす日々。息子の祥太(寺田心)にはプロレスの仕事をしていることを黙っているが、どうしても父親の仕事が知りたい祥太はこっそりと通勤の車に潜り込む。着いた先はプロレス会場。そこで祥太はお父さんがゴキブリマスクだと知ってしまう。あんなに体がデカくてカッコイイお父さんが観客から罵倒を浴びせられるのを見て「悪役のお父さんなんか嫌いだ」と言ってしまう。
 母の詩織(木村佳乃)やプロレスマニアで大村ファンの雑誌記者ミチコ(仲里依紗)からいくら「お父さんはプロレスが好きだから続けてるの」「悪役もプロレスには必要」と教えられても祥太には通じない。学校でお父さんは団体トップのスター、ドラゴン・ジョージ(オカダ・カズチカ)だと祥太が言っていると知らされた孝志は息子が誇れる父親になろうと団体でNo.1のレスラーを決める大会Z-1CLIMAXに参戦。周囲の予想を裏切って勝ち続ける孝志だが「わるもの、やめられないの?」と祥太には自分の気持ちは伝わらない。準決勝のリングに上がった孝志は覆面を脱いで正体を明かしてしまうのだが試合には負けたうえにケガは悪化。勝手なことをしたせいで団体をクビにされるなど踏んだり蹴ったり。
 プロレスをあきらめて普通の父親になろうとする孝志に最後のチャンスが訪れる。ドラゴンから直接対決を申し込まれたのだ。孝志はケガをおして最後のリングに向かう。


 悪役レスラーの父親を嫌う息子のために無謀な戦いのリングにあがるという展開は中島らも原作の『お父さんのバックドロップ』(04)とほとんど同じ展開。お母さんの仕事が散髪屋っていうのも…違うところはプロレスに対する視点。「プロレスは真剣勝負か否か?」というややこしい問題について、だ。『パパは~』ではプロレスはショーアップではない真剣勝負(その割には棚橋と田口監督の悪役コンビはほとんどショーだけど)という視点の元で作られているのでトーナメント戦も真剣勝負という扱いだ。『お父さんの~』では熊殺しの異名を持つ空手家との異種格闘技戦という設定にしてこの問題にあえて触れるのを避けている(だが団体の社長を演じる生瀬勝久から「ガチンコやぞ!殺されてまうぞ!」と言わせているけど)。
 新日本プロレスは株式上場を控えていると言われ、WWEが上場する時シナリオの存在を明かしたように新日はこの映画でモロにプロレスには台本がある、と明かしてしまうのか!?とか妄想したんですがそんなことはなかった。その辺に思い切って突っ込めばプロレス・ドキュメントの傑作『ビヨンド・ザ・マット』(1999)ぐらいにはなれただろうに…惜しい!

 とはいえこの映画が感動的で前述した作品たちに負けず劣らずなのは主演の棚橋のスター性と人の良さが物語とうまくマッチしてるからだろう。実際に良きお父さんで近所で緑のお父さんもやっているという棚橋と本作の主人公はマッチしすぎ!あえて熱狂的うるさ方のプロレスファンにはなく、プロレス初心者の入り口としてこの映画は開かれた。
 最後のリングに悪役のまま上がって戦うというのも「悪役だってプロレスには必要なんだ」という主張を裏切らない。あれが善玉で戦ってたら最悪ですよ。

 唯一引っかかるのは祥太が好いているクラスメイトの女の子。この子はドラゴンのファンでゴキブリマスクが大嫌いなので嘘をついていた祥太のことを「嘘つき嫌い!」といって突き放すのだが、最後の試合会場では悪役のお父さんを嫌う祥太に「どうして?悪役のお父さんカッコイイよ」とかいっちゃうのだ!いけしゃあしゃあと!お前がドラゴン好きだというからお父さんが悪役だと黙っていたというのに…!お前の、お前のためについた嘘で苦しんでいたというのに…都合のいいことぬかしやがって~!ホント、女の子ってこういうことありますよね




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Posted by 縛りやトーマス at 02:13│Comments(0)映画
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