2018年11月04日

それでも声をあげろ!『クワイエット・プレイス』



 近未来。地球に落下した隕石に付着した謎の生命体によって人類は絶滅の危機に瀕していた。「音」に反応するモンスターはどこからともなく現れ瞬時に人間や動物を殺す。そんな世界で生き残ったアボット家の人々は手話で会話し、外を歩くときは砂を巻いてその上をゆっくりと歩く。ある日食料調達のために一家で外出するが音の出る玩具を欲しがる末っ子を「これは音が出るからだめだ」と諭す父親リー(監督、脚本、主演を担当するジョン・クラシンスキー)。しょんぼりする末っ子を可哀そうに思う聾唖の長女リーガン(ミリセント・シモンズ)は電池を抜いてこっそり玩具を渡してやる。しかし帰り道で玩具がけたたましく音を立てた!抜いたはずの電池をポケットにしまい込んでいたのだ!あわれ家族の目の前でモンスターに惨殺されてしまう…一年後、残された家族は未だに音を立てず、言葉も話さずに生き延びていた。死んだ末っ子のことでわだかまりを残したまま。


「決して音を立ててはいけない」というルールを課された家族のサバイバルが描かれているのだが、各地の映画館でも観客たちが自主的にルールを課していて『クワイエット・プレイス』の上映中はいつも騒がしくポップコーンを食べスマホの電源を入れっぱなしで前の席をけりまくる連中がわずかな物音に気を遣っている光景が広がっている。
 声をあげれば即死という状況でリーの妻エヴリン(クラシンスキーの奥さんであるエミリー・ブラントが演じている)は妊娠し出産も間近だ。地下室に完全防音の部屋をつくり産もうとするが、階段を降りるときに突き出た釘を踏み抜いてしまい声を挙げてしまう。モンスターはそれに吸い寄せられてしまう。
 音を立ててはいけない、というワンアイデアで押し切る話なので設定の穴が結構あり、滝の傍で「ここなら聞こえない」と会話をしたり(水の音はいいのかよ)、魚を捕まえて食料にするけど魚は音を立てて殺されないのか問題、あと子供産むってあんたら音を立ててはいけない世界でどうやって子供つくったんだよ…つまり(以下あまりに下品なので省略)

 家族はトウモロコシ畑に囲まれた家に引きこもっていて、宇宙人に襲われるというのもシャマランの『サイン』に似ている。それだけ聴くと結構な底抜け感のあるSF映画なんですが、スタッフはこの映画を現代アメリカ社会を揶揄するために書いている。うかつに言葉を話せない、声を挙げられないというのはトランプ大統領の排外主義がのさばっているアメリカでは少しでも反対する意見を述べた途端に左翼呼ばわりで、余計なことを口にして攻撃されるぐらいなら黙っていようという考えがまかり通っている。この映画の世界では声を挙げたら殺されて、そんな目にあうぐらいなら大人しく黙っていることを強制されているのだからこんなにわかりやすい比喩もない。
 それでも産むことを選択する家族のように「矛盾してるぞ」「設定穴だらけじゃねえか」「ダメ映画」と言われてもかまわない。声をあげろ!




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Posted by 縛りやトーマス at 06:28│Comments(0)映画
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