2018年11月12日

ボンクラ中年が陰謀論にハマって秘密を解く『アンダー・ザ・シルバーレイク』



『イット・フォローズ』をヒットさせた新鋭(といっても74年生まれだから僕と同い年だけど)デヴィット・ロバート・ミッチェル監督の最新作。「“それ”が追いかけてくるから逃げろ!ただそれはゆっくり歩いてくるから走れば逃げられる。だが“それ”を誰かに移さない限りどこまでいっても必ず追ってきて捕まえるぞ」という奇怪なホラー映画だったが今回はさらに奇怪で謎にまみれていた。

 映画の都ロサンゼルス、シルバーレイクに住む中年男サム(『アメイジング・スパイダーマン』『沈黙-サイレンス‐』のアンドリュー・ガーフィールド)は成功を夢見ながら何もしていないボンクラ。自宅アパートにはギターとか映画のポスターが貼ってあってそういう仕事がしたいのかな?と思われるが日がな一日ぼんやり過ごすだけ。しかもポスターは『大アマゾンの半魚人』だから相当なボンクラだ…

 シルバーレイクは高級住宅街だがその間に取り残されたようなアパートに住んでいて、家賃を滞納して立ち退きを迫られている。この街で女優を目指す彼女からも愛想を尽かされそう。
「人生の失敗編を生きている気がする」
 とぼやきながら、何をどうするわけでもなく、隣のセレブ住宅地を双眼鏡で覗いている。すると目を見張るような美女サラ(『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で砂漠の支配者イモータン・ジョーの妻たちのひとりだったライリー・キーオ)を見つけ偶然出会い、恋に落ちる。自宅に招かれたサムは夢のような一晩を過ごし「また明日」と別れる。しかし翌日訪れると彼女は姿を消し、家には誰もいなかった。サムは素人探偵と化して彼女の家を見張る。すると何者かが彼女の私物を運び出し、怪しげな男に手渡していた。シルバーレイクの都市伝説を綴った同人誌『アンダー・ザ・シルバーレイク』を手に入れ「犬を殺す男」の話を読む。
 サムは尾行され、スカンクに分泌液をひっかけられる。彼女の痕跡を追ってあちこちで謎の記号や暗号、サブリミナルメッセージを目にする。

「この街には何かが隠されている。それを見つけ出したものだけが成功することができるんだ!」

 と叫ぶサムをついに彼女は見放す。サムは自説に確信をもってシルバーレイクに隠された秘密を暴こうとする。

 負け犬人生まっしぐらのボンクラが陰謀論に取り憑かれて破滅しそうになるという、悪夢のような話だが自分もボンクラ人生まっしぐらなのでこの映画は痛すぎるほどよくわかる。他人事ではないのだ
 サムは記号や電光掲示板に謎のメッセージが示されたり、都市伝説について書かれた同人誌を読むたびに「疑惑は深まった!」「すこしずつ真相にたどり着いている!」というがごく普通の観客には何がどうなってるのかまったくわからない。ボンクラの世迷い事だろう、としか思えないがサム(と彼に取り憑かれた僕みたいな観客たち)には彼がダンジョンの奥に隠された宝箱を見つけ出すRPGの主人公に見える。そういえばサムの部屋には『12モンキーズ』のポスターもあった。世界の破滅を救うためにブルース・ウィリスはタイムマシンで過去にやってくる。「自分は未来から来た」といっても周囲からはただのイカれたやつとしか思われない。サムはニンテンドーパワー(ゲーム雑誌。アメリカのファミ通みたいなもん)に載った『ゼルダの伝説』のマップにシルバーレイクの地図を重ね合わせる。浮かび上がってきたのは…!


 デヴィット・ロバート・ミッチェル監督自身もシルバーレイクの住民だったことがあり、長年芽が出ない日々を送って、サムのように「この街には成功するために秘密が隠されているに違いない」と思っていたという。彼は今は成功しているから秘密のカギを見つけ出したのだろうか。けれどこの映画の結末を見る限り「自分は成功したかも知れないけど、セレブじゃないんだ」と言いたいみたい。

 サムは秘密のカギを見つけ出す過程で自分が愛してきたカルチャーの知りたくもなかった秘密や正体を知ってしまう。知ったところでどうにもならない。サムが部屋でぼんやりと眺めているテレビで『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』をやっているというのはあまりに象徴的だ。




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Posted by 縛りやトーマス at 08:45│Comments(0)映画
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