2018年12月03日

犬がトニカクカワイイ『ドーベルマン・ギャング』

 銀行強盗映画…口にするだけで血沸き肉躍るではないか(?)。バスジャック映画、カーチェイス映画なんかにも同様の効果がありますね。アメリカでは未だに銀行強盗映画-こういうのは通ぶっていうと、ヘイスト(強盗)映画っていうらしいですよ-はたまに作られてますが、日本ではとんと見かけられなくなった。『暴走パニック 大激突』とか『月光仮面』とか昔はあったのに。銀行強盗自体が日本ではほとんど起きないからなあ。たまに包丁一本で「金を出せ!」とかいう間抜けな奴がすぐ逮捕されたりするぐらいですか。やはり日本では銃が手に入れにくいので、銀行強盗もやりにくいからだろうか。

 今回ご紹介するのは銀行強盗の本場、アメリカが1973年に公開した『ドーベルマン・ギャング』だ。



 なんと恐ろしいタイトル!平松伸二も真っ青な狂犬のごときギャングたちが銀行を次々襲う様が目に浮かぶ…のだが、これはタイトル通り、犬のドーベルマンが銀行を襲う映画なのだった…

 エディ、サミー、ジョジョの3人組は「完璧な銀行強盗計画」を立て、実行に移すが逃げる際、銀行前に止めた自分たちの車とそっくりな他人の車のトランクに金を放り込んでしまって大失敗!(どこが完璧な計画なんだ)
 これに懲りないエディは計画を見直す。なんとしても一山当てて遊んで暮らすんだ!そもそも人間のやることに完全などありえない、優秀なロボットにでもやらせればいいのだ…と一山当てることしか考えてないボンクラならではの発想に至るがロボットがどこで手に入れられるかわからない。途方に暮れるエディだが、中古車販売店に忍び込んだチンピラたちがドーベルマンに追い返されて捕まる様子を目にして、これだ!と。

「ドーベルマンを調教して、銀行強盗をやらせればいいんだ!」

 なるほど、大抵の人間はドーベルマンに吠えられたら恐れおののくし、仮にしくじっても銀行に自分たちはいないのだから逮捕されることもない。ドーベルマンは自供もしない!か…完璧だ!!
 画してエディたちは前代未聞のドーベルマンによる完全犯罪を目論む。軍用犬の調教をしているトレーナーのバーニーを騙して雇い入れる。「ジャーマン・シェパードしかやったことない、ドーベルマンの調教なんかしたことないよ」と渋るバーニーだが、何とか言いくるめて山中に小屋をつくって6頭の犬を連れてくる。
 6頭の犬にデリンジャー、ボニー、クライド、ベビーフェイス・ネルソン、プリティ・ボーイ・フロイド、マ・バーカーとアメリカ史上に名を遺す伝説のギャングたちの名前をつけてるところがちょっと洒落てる。「まとめて買ったからおまけがついてきた」とブルドッグが一匹。そいつにはジョン・エドガー・フーヴァーと初代FBI長官の名前をつけた。いかにも何かありそうなネーミングだが、深い意味はないので気にしなくてもよい。

 こうしてドーベルマンたちの調教が始まるのだが、これがなんとも牧歌的というか…カントリー音楽に合わせてドーベルマンが走ったり、柵を飛び越えたり、柵の下をくぐったり、相手に噛みついたり、待てと言われたりする様子がモンタージュで延々と続く。見ているうちに「ドーベルマン、カワイイな~」と感じてくる。「ペットフードはドギーマン」のCMを思い出した。

 連中の目的が銀行強盗だと気づいたバーニーとひと悶着ありながらも、最終的に計画に乗ることに。ただし作戦には重要な問題があった。ドーベルマンに複雑な命令はさせられない。当初の計画では入り口をふさぐ役、銀行の警備員を威嚇する役、行員に「金をバッグに詰めろ」と書いた手紙を渡す役などが細かく指定されていたが、近くに居て犬たちに指示を出さなきゃ無理だ。とはいえ銀行に自分たちが入ったら何の意味もない。完璧な計画はおじゃんか?だがバーニーが一頭ごとに指定した犬笛を聞かせて命令を聞かせる、というアイデアでこれを乗り切ることに。犬にバッグを背負わせて、金を詰めたらアジトまでの帰り道に土を巻いておき、その匂いを辿らせて猛ダッシュで帰らせればいい。か…完璧だ!!

 あとは実行あるのみだが、エディの愛人ジューンが「あんたたちのメシをつくって、犬の世話までしてる私になんの分け前もくれないってわけ?」と不満を漏らしだす。「娼婦にやる金なんかねえ!」と平手打ちしてその場を収めたが(収まるわけない)、バーニーが彼女を気遣いだす。意味深な場面なので、「二人がデキて、最後にはエディたちを裏切るんだな」といった伏線のように思えるが、そんなことはまったくなかった

 決行日。直前になってバーニーが「犬たちに悪いことはさせられない」と逃亡。仕方なくバーニーのそばで調教を見守っていたジューンが代わりに犬笛を吹いて命令を出す。無事強盗は成功し、アジトで大金を待つエディたち。金を取ろうとしたエディたちに犬たちが吠え、噛みつく!遠くでジューンが犬笛を吹いてエディたちを襲わせたのだ。あっという間にかみ殺されるエディたち。銀行で行員や客を威嚇している最中でもどことなくカワイイな~という描写が続くので、クライマックスで突然凶悪なシーンになって心底驚いた
 観客を痛快に裏切ってくれる展開に膝を打とうとしたのだが、犬たちはジューンすらも裏切っていずこへと走り去るのであった…

 最後にカントリーが爽やかに流れて「これで映画はおしまいだよ~」とあんまりな歌詞で苦笑い。音楽担当が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などのロバート・ゼメキス作品や近年では『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』や『レディ・プレーヤー1』などで知られるアラン・シルヴェストリの映画デビュー作というのもすごいが、主題歌を本人が歌ってるというのも!


 狙って作られたのか、意図せずそうなってしまったのかがわからない映画で見ているこっちは最後まで困惑しっぱなし。一部好事家の間では評価されていたようで、シリーズ化してパート3まで作られてる。監督のバイロン・ロス・チャドナウは本作と続編の『ドーベルマン・ギャング2』以外はまったく知られておらず、後にウィル・スミス主演で映画化された『0088/ワイルド・ウエスト』や『俺がハマーだ!』などテレビドラマの世界で活躍したのだから、きっと狙って作られたと思われる。
『フレンチ・コネクション』『ダーティーハリー』『エクソシスト』といった殺伐とした作品が多かった70年代だったとしても異質な作風で、タイトルの凶悪さに比べてもほのぼのとして、とにかくドーベルマンが可愛くて憎めない。忘れがたい魅力のある映画だ。犬に優しくしよう。




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