2019年01月18日

挑戦こそが評価『喜望峰の風に乗せて』

挑戦こそが評価『喜望峰の風に乗せて』

 『マン・オン・ワイヤー』でアカデミー賞を受賞したジェームズ・マーシュ監督、『英国王のスピーチ』でアカデミー賞受賞したコリン・ファレル、『ナイロビの蜂』でアカデミー賞をやはり受賞したレイチェル・ワイズのトリオによる、1968年にヨットの世界一周に挑戦した男、ドナルド・クローハーストの伝記映画である。ポスターを見てもさぞかし感動的な愛の物語が繰り広げられているのだろうな…と思って観に行くと痛い目に遭うぞ!

 19世紀のイギリスは米ソが宇宙開発競争を繰り広げている中、予算がないので代わりに海に出て行った。ヨット世界一周ブームが起きていたのだ。コンパスの元になったとされる器具を作って売る会社の社長、クローハースト(コリン・ファレル)は会社の売り上げが伸びずに苦しんでいた。そこにヨットレースの話が飛び込んでくる。クローハーストは世界一周に挑戦して優勝すれば会社の宣伝になるし、子供たちに名誉も与えられる!と思い込んで挑戦を決意。
 持前の口の上手さでスポンサーを見つけ、ジャーナリストには「俺の挑戦を本にすれば売れる」と持ち掛け、あっという間にクローハーストの挑戦は小さな港町を巻き込んでゆく。しかしクローハースト自身は近海したいったことのない素人セイラーだった。なのでスタート時期までにヨットも完成しなかった!出発期限が迫り、棄権を考えるが、借金の抵当に会社、自宅も入れており、しかも町の人間は「うちから世界チャンピオンが出るぞ」と盛り上がっている。逃げることはできない!仕方なく船出するがすぐにヨットは故障、まともに進むことすらできず、海の上をぐるぐる回るだけになってしまう。
 通信機で苦し紛れに伝えた位置を聞いた町の人々は「この勢いならトップどころか世界記録も夢じゃない!」とさらに盛り上がり、テレビでその活躍が伝えられてしまう。後に引けなくなったクローハーストは偽の航海日誌をつくって、世界一周をでっちあげようとする。トップだと日誌を詳しくチェックされてしまうので、3、4番手ぐらいでゴールしようと考えるが、彼以外の挑戦者は次々脱落し、彼は「まずい、どうしよう…」とますます追い込まれてしまう。海の上で次第に心を病んでいくクローハーストを待つ運命は?


 素人が記録に挑戦して苦難に苛まれながらも華麗に記録を達成する内容かと思ったらナニコレ。無謀な冒険に挑んだ素人がミスの上にミスを重ねていくだけじゃないか!このポスターとスタッフ、出演陣に引っかかって観に行った観客が唖然茫然としているそうですが、そりゃそうだよな。ジェームズ・マーシュ監督は何がよくてこの題材に惹かれたんだ?マーシュ監督やコリン・ファレルは

「これは、真価を認めてほしいと願った男の物語だ。彼は懸命に努力し、無謀だが勇敢なことをしようとしたのだ」(マーシュ)
「人は皆、自分の能力以上のところに到達したいと思うはずだ。脚本を読んだとき、私は多くの人々の心に響くものがあると感じた。人は途轍もなく危険なことに取り組む。クローハーストがなぜそうしたのか、私には理解できる」(ファレル)


 とコメントしている。なるほど、無謀であっても挑戦すること自体を否定することはできない、結果だけで人の真価は決まらない。挑戦自体が評価されるべきだ、と。わかる
 映画はクローハーストが出航した町でロケされ、当時の市長の息子だった人が市長役が出演している。ロケ地で住民に取材したところ、クローハーストを非難したり責めた人は誰もおらず、いまだに地元の英雄として扱われているそうだ。




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Posted by 縛りやトーマス at 16:43│Comments(0)映画
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