2019年03月14日

ここは世界一優しいただいまが待ってる場所『劇場版のんのんびより ばけーしょん』

ここは世界一優しいただいまが待ってる場所『劇場版のんのんびより ばけーしょん』

 2013年と2015年に放送されたテレビアニメの劇場版。『のんのんびより』はバスは2時間に一本、牛が通行するので気をつけよという道路標識があるぐらいの田舎を舞台に、生徒が5人しかいない分校の生徒とその家族、知人たちの大した事件は何も起こらない日常を描いた作品だ。なので劇場版と言われても旭丘分校の生徒たちが世界の支配をたくらむ巨大な敵と戦うことはない。テレビアニメの延長で何も起こらない日常をただゆるく描くだけだった。『ゆるゆり なちゅやちゅみ!』と同じ。

 夏休みに入ったれんげ(小岩井ことり)ら旭丘分校の生徒たちはショッピングモールの福引で三泊四日の沖縄旅行を引き当てる。保護者替わりのかず姉(名塚佳織)、駄菓子屋(佐藤利奈)に、分校の卒業生ひかげ(福圓美里)、このみ(新谷良子)を加えた一行は沖縄へ。旅館の看板娘、新里あおい(下地紫野)と仲良くなったり、海でマンタを見たり、カヤックで川を下ったり、街中に牛がいるのを見て「ここも田舎なのん?」と思ったりもしたけれど、特に大した事件は起きない沖縄のバケーションを過ごすのだった。


 もちろん何も起きないのではお話にならないので、テレビ版にはない劇場版ならではの物語が存在する。分校の教師でありながらいつも居眠りしているれんげとひかげの姉、かず姉は木に引っかかった小鞠(阿澄佳奈)と蛍(村川梨衣)のカヤックを助けてあげたり、水分補給のペットボトルを忘れた二人の水を事前に用意していたりする。普段の様子からはありえない保護者然とした態度に驚かされるが、直後、バテて一歩も動けなくなる(やっぱり)。上京して都会暮らしをしているひかげは劇場版では完全にオチキャラになって毎度床に寝かされて笑いを取る。

 そして劇場版のメインを貼るのは、越谷姉妹の妹、夏海(佐倉綾音)であった。旅館の看板娘、あおいは同い年なんだが、真夜中にこっそりとバドミントンの壁打ちをやってる彼女を見る。「壁打ちをすると母親に怒られる」というあおいに自分も怖い母親に説教されることが多い夏海は感情移入。あおいの学校に案内してもらおうと、あおいの代わりにみんなで寝所の掃除をして自由時間をつくってあげたりする。自分の部屋の掃除すら強制されてもしない夏海が!
 夜の海での夜光虫の思い出などを経て、最後には「帰りたくない」と泣き出す。夏海は喜怒哀楽の激しいキャラなのでこのクライマックスには合っていて、観客の涙をしっかり誘う。同様に喜怒哀楽の激しいひかげも泣いていた(彼女は露骨に涙を見せるようなキャラではないので畳にうつぶせてる。劇中ずっと床に寝かされて文句言ってたひかげが床に突っ伏すって最高の演出ですね)。
 こういうシーンで落とすのなら、喜怒哀楽があまり顔に出ないれんちょんをメインにはしづらかったんだな。理解した。

※よく見たら突っ伏してたのはベッドでした


 監督、脚本とテレビシリーズと同じ川面真也、吉田玲子のコンビ。このコンビはさりげないキャラの仕草で印象付けて、じんわりと泣かせにくる。かず姉が珍しく頼りがいのあるところを見せた後でセピア色の画像でこの後のヘバリ具合を想像させたり、

ここは世界一優しいただいまが待ってる場所『劇場版のんのんびより ばけーしょん』
在りし日のかず姉の雄姿(笑)

 最後の別れの場面も顔を拭って泣くところを見せたあと、車の中では鼻をすするぐらいで涙を抑えていたりと、日本映画特有の「泣いてまーす!悲しいでーす!」とわかりやすい表現はしない。なんてことのない日常の光景にこそ感動や涙する場面がある。
「にゃんぱすー」とれんげが手を挙げた物語は「ただいまー」で幕を閉じる。ここは世界一優しいただいまが待ってる場所。






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