2019年07月18日

そりゃあ甘口カレーが嫌いなやつはいねぇよ『Diner ダイナー』

そりゃあ甘口カレーが嫌いなやつはいねぇよ『Diner ダイナー』

 世界の連続殺人鬼についてのノンフィクション本『異常快楽殺人』や、ホラー(?)小説『メルキオールの惨劇』などで知られる平山夢明の小説の映像化。元殺し屋のシェフが切り盛りするダイナーは殺し屋専門店。狂った殺し屋だらけの店で働くことになったごく普通のウェイトレスは無事生き残ることができるか!?

 夢も希望もない人生を送っていた普通の女、オオバカナコ(玉城ティナ)は「日給30万円」という怪しげなバイトに手を出すと、それは二人組の銀行強盗を逃がすゲットアウトドライバーの仕事で、カナコはカウボーイ(斎藤工)とディーディー(佐藤江梨子)を逃がそうとするも失敗、悪党どもに捕まって拷問。カナコは「わたしが料理ができます!」と唯一の取柄があることを伝えて命乞い。殺し屋専門のダイナーを切り盛りする元殺し屋のシェフ、ボンベロ(藤原竜也)に売られることに。

 この藤原竜也の演技がいつも以上にひどく

「俺はー、ここのー、王だ!」
「砂糖の一粒までもが俺に従う!」


 とカイジの「キンッキンに冷えてやがる!」とまったく同じノリの演技で見ていられない。でも彼が主役なのでこの映画はすべて彼がリードするのです。

「この店はー、皿の置き方ひとつで、殺されることもある!」

 という凶悪な店で、壁にはすでに殺された8人のウェイトレスの写真が飾ってある。トイレ掃除ひとつまともにできないカナコは9人目いりするのは間違いない、がボンベロの目を盗んで金庫のダイヤルを開け、中にしまってある1億円以上するディーヴァ・ウォッカを自分しかわからない場所に隠してしまう。ちなみにダイヤルの番号は5648、殺し屋!(こんな番号、誰でもわかるわ!)
 カナコはディーヴァ・ウォッカを人質ならぬ酒質にして自分を無事解放した時に隠し場所を教えるといい、とりあえず身の安全を図ることに成功。ボンベロはカナコを忌々しく思いながらも彼女を殺すわけにはいかなくなるのだった。

 店には入れ代わり立ち代わり色んな客(殺し屋)がやってきて、一騒動起こす。「砂糖の一粒までもが俺に従う!」とか言ってたけど殺し屋たちはボンベロのいうことなんか無視して騒いだり、殺しあったりする。殺しあうとはいっても、血の代わりに羽毛が飛び散る程度の描写なので、予告編などから相当にトチ狂った世界観を見せてくれるんだろうなーと期待した観客の気持ちを見事なまでにスルーしてくれる。殺し屋たちはいずれも無意味に「キャハハ」と笑って騒いで暴れまわる。なぜ笑うのか?そこには何の意味もなく、ただ「狂っているから」ぐらいの答えしかないのだろう。

 所詮、監督の蜷川実花の考える狂気の解釈がそれぐらいなのだろう。なにしろレイティング「G」だもんな!

 中盤からボンベロとカナコは心を許しあうようになる。カナコは小さいころに母親が姉を連れて家を出て行ってしまい、「自分は何の価値もないから捨てられた」と思いいつもひとりぼっち。この世に自分の居場所などないと思い込んでいるカナコは初めて自分を必要としてくれるダイナーを見つけることになるのだが、ボンベロが所属する組織の跡目争いに巻き込まれ命を狙われる。しかしボンベロが身を挺してカナコを助けだす。

「この世には、お前を必要としてくれるやつがきっといる!」

 カナコはうまく逃げられたら飲食店を開くから、そこで待ってると。うわっ、こんなしょっぱいラブロマンス劇になるとは・・・

 原作のカナコはどうしようもないクズ女で、できちゃった婚で生まれた子供を放って男遊びにふけったり、挙句その子供を自分のせいで死なせてしまったりする、読者がどうしたって共感できないキャラクターにされてるのに、映画では観客が共感して応援できる人物にされてしまい、その時点で蜷川実花のセンスのなさがねぇ・・・見ていられない。

 平山夢明の『異常快楽殺人』を読んだときは、本当に狂った殺人鬼の詳細なルポに胸糞悪くなるほどの嫌悪感を覚えたけど、何度も読んでしまうんだよなあ。本当にイカれた人間のすることになぜか心惹かれてしまうのだ。そんな風に思わせてしまう平山夢明の筆致のせいもあるのだろうが、やりすぎ、書きすぎにまで到達した表現には万人に受け入れられようとしたソフトな作品にはない、本物の中毒性がある。

 それを口当たりのよいまろやかな甘口カレーレベルに貶めた(そりゃあ甘口カレーが嫌いなやつはいねぇよ!ってわけでヒットはしているそうだが)蜷川実花は極刑に値する。
 もっと病みつきになるレベルの、ブラックカレーが食いたいんだよ!




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Posted by 縛りやトーマス at 13:12│Comments(0)映画食べ物
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