2019年08月30日

書くことはやめられない『ガーンジー島の読書会の秘密』

書くことはやめられない『ガーンジー島の読書会の秘密』

 イギリス海峡フランス側に位置するチャネル諸島はイギリスのリゾート地だが連合王国に属さない、イギリス王室保護領となっている。もとはヴァイキングが収めていたノルマンディー公国の領地であった。13世紀初頭にイングランド王がフランスとの戦争に敗れノルマンディー公国を失ったが、チャネル諸島はイングランド王に忠誠を誓ったためイングランド王領のまま、現在に至っている。そんなチャネル諸島で2番目に大きい島、ガーンジー島を舞台にした『ガーンジー島の読書会の秘密』を観た。


 第二次大戦終結直後のロンドンで、駆け出しの作家ジュリエット・アシュトン(『ベイビー・ドライバー』で主人公ベイビーに無償の愛を捧げるヒロイン役で人気爆発したリリー・ジェームズが演じている)はある一通の手紙を受け取る。それはドーシー・アダムズ(ミキール・ハースマン)というガーンジー島の住民で、ジュリエットが戦争中に生活費のために古本屋に売った本をドーシーが偶然手にし、そこにジュリエットの名前と住所が書いていたので手紙を送ったのだ。戦争中はナチスに支配されていた島だったが、終戦したので島の本屋を復活させたく、ロンドンの書店の住所を教えてほしい、というもので、戦争中は“読書とポテトピールパイの会”に所属し、会は夜間の外出を禁止し、家畜すら島民から取り上げる厳しい統治をしていたナチスから豚肉を隠すために生まれた、というくだりに興味を持ったジュリエットは「会のことを教えてほしい」と返事を出す。

 ドーシーの返事には会は自分の他に若い女性のエリザベス(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)、その知人で初老の女性アメリア(ペネロープ・ウィルトン)、自家製のジンをみんなに振る舞うアイソラ(キャサリン・パーキンソン)、郵便局長の老人エベン・ラムジー(トム・コートネイ)を合わせた5人。最初はアメリアが密かに隠していた豚をみんなで食べよう、というだけであったが、その帰りにナチス兵に外出したことを咎められ、咄嗟にエリザベスは「読書の会です」といってごまかした。体裁を整えるために5人は営業していない古本屋からかき集めてきた本をみんなで読むようになり、終戦後の今もそれは続いている。厳しいナチス統治の中でただ一つの娯楽であり、「会は僕らの避難所だった」というドーシーの手紙に興味を募らせたジュリエットはこれを新聞の記事にしようとガーンジー島に赴く。船に乗り込む寸前に恋人のマーク(グレン・パウエル)から予期せぬプロポーズを受け、恋も仕事も上向きの彼女は島へ向かうが、読書会のメンバーからは「会のことを新聞記事にしたい」というとメンバーからは「記事にされるのはお断り」と言われ、距離を置かれてしまう。この場にいないエリザベスのことを聞いても「今は島にいない」と言われるだけ。

 ジュリエットは会のメンバーからエリザベスの為人を聞き出す。エリザベスは誰にも分け隔てなく優しく、他人に尽くす聖女のような人だとドーシーから教えられるが、宿の女主人シャルロットからは「あんな悪女はいない」「会の連中に嘘を吹き込まれているだけで、あの女はとんでもないアバズレさ」とまるで逆のことを聞かされる。エリザベスの秘密に迫ろうと滞在期間を延ばすジュリエットは、エリザベスが島にいない理由、その真相にたどり着くのだが・・・


 英国アカデミー賞に輝いた『フォー・ウェディング』、デップ&パチーノの『フェイク』などで知られる巨匠、マイク・ニューウェル監督による本作はナチスの支配に揺れる島の住民が戦争に翻弄され、引き裂かれる悲劇のメロドラマだ。その悲劇に島民のみならず、ロンドンで戦争の災厄に見舞われたジュリエットも巻き込まれていく。
 ハーレクインロマンスも真っ青の展開だが、ニューウェルの演出や、リリー・ジェームズ他、『ダウントン・アビー』の出演者による優雅で洗練された物語にはメロドラマには縁のない40代オッサンの僕でも思わず前のめりで夢中になってしまった。そして悩みに悩んだ挙句、物語を書くことを決意したジュリエットが怒涛の勢いでタイプライターを叩きまくるシーンには、胸にこみ上げるものがあった。一日数百アクセスぐらいしかないこのブログを10年続けている僕もどうしても書きたいこと、残したいことがあってキーボードをたたいているわけです。エリザベスと僕では書いている内容は大分違いますけど・・・書くことはやめられない!




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Posted by 縛りやトーマス at 20:43│Comments(0)日記映画
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