2019年09月27日

1セントの損もしなかった倹約映画『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』

1セントの損もしなかった倹約映画『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』

 ハリウッド映画にその名を遺す(いろんな意味で)映画プロデューサー、ロジャー・コーマン。彼は徹底した倹約主義で500本近い映画をつくり、1セントの損もしなかったという。多くの作品はごみ同然に扱われ消え去ったが、カルト的な人気を誇って今も振り替えられる(いろんな意味で)作品が『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』だ。
 59年に5万ドル、撮影日数5日間で撮った悪趣味ホラー『血のバケツ』なる作品があるのだが、コーマンはそのセットと役者を使いまわして『リトル~』を作ってしまう。こちらは3万ドル、2日間でだ。『リトル~』はその後ミュージカル化して、86年にはリメイクされてしまうのである。
 しかし60年の公開当時にはかろうじて製作費をペイできた、程度のヒットだったので大ヒットをもくろんでいたコーマンは不満タラタラだったという。セットと役者を使いまわして、2日で撮った映画で贅沢いうなや。しかし、そのあたりがドケチで500本の映画で1セントの損もしなかった、コーマンたる所以であろう。

 さて、映画は気弱な花屋の店員シーモア(ジョナサン・ヘイズ)は金のことしか頭にない店長のマシュニク(メル・ウェルズ)にこき使われ続ける日々。マシュニクの娘オードリー(ジャッキー・ジョゼフ、出演後はコーマンの元でこき使われていたジョー・ダンテ監督の『グレムリン』シリーズなどで活躍す)に惚れているが、口には出せない。
 店の売り上げが芳しくないため首になりそうになるシーモアは、こっそり育てている珍しい植物、オードリージュニアをもってきて店に飾れば人気が出るかも・・・というが、すぐに萎れてしまう。水をやっても、肥料をやっても大きくならない。困り果てるシーモア。しかし偶然自分の血が触れたオードリージュニアが元気になるのを見て、肥料は人間の血だと気づく。
 どんどん成長して巨大になっていく奇妙な植物見たさに花屋は客でごった返す。大喜びのマシュニク。一方シーモアは貧血気味でヘトヘトになるが、マスコミの取材を受けたりするのでオードリージュニアを育てるのをやめるわけにいかない。とはいえこれ以上自分の血をあげるのは限界、さあどうすんべとなったシーモアはいろいろあって人を殺してしまう。死体の処分に困った彼は「メシが食いてぇ!メシをよこせ!」とわめくオードリージュニアの口の中に死体を放り込んでしまう。こうして気弱な青年は植物を生かすために餌として人間を食わせなくてはならなくなるのであった・・・

 出てくる人間はみんなイカレており、強烈なラスト・シーンも含めてブラックの極致のような作品だ。前述したとおり、本作は82年にミュージカル化して今も再演が続く作品となり、86年にはヨーダの声でおなじみフランク・オズの手によりリメイク。こちらは皮肉の効いたブラックなオチがハッピーエンドに作り替えられた上(あんな無茶苦茶しておいて、ハッピーエンドになるというのもどうかしてると思うけど)、イカれた人間ばかりのブラックジョークが薄められていたのが残念。あのラストがよかったのに
 しかしサディストの歯科医のところにマゾヒストの患者がやってくる爆笑場面をスティーブ・マーティンとビル・マーレイが愉快に演じていて、そこは最高。オリジナルの患者役を若き日のジャック・ニコルソンが演じていたのですが、彼に負けてなかったね。

 リメイクはミュージカル版の映画化で、予算もオリジナルの千倍の3000万ドルをかけて作られた。リメイクをコーマン自身は気に入っていないという。オリジナルのブラックさが薄められたからか?と思ったら

「金をかけすぎ。収益率が悪くなるだけだ」

 って、さすが倹約家コーマン。彼は映画作りにおいて収益率を何よりも気にしており、多くの低予算映画製作者が少しヒット作を作ると、こぞってビッグバジェットの大作を手掛けて製作費を回収できず自滅していく中、かたくなに大予算の映画をつくろうとしなかった。それこそ彼が何十年もの間ハリウッドで大物プロデューサーとして君臨し続けた理由なのだ。死体を植物に食わせて一石二鳥、という本作のストーリー展開にコーマンらしさが現れている。『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』、間違いなくコーマンの代表作である。




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