2019年10月02日

20年封印されたメイキング ジム・キャリー大暴れ『ジム&アンディ』

20年封印されたメイキング ジム・キャリー大暴れ『ジム&アンディ』

 ネットフリックスで配信されているオリジナルドキュメンタリー『ジム&アンディ』(2017)を観た。

 これは1999年公開(日本は2000年)の実在したコメディアン、アンディ・カウフマンの自伝映画『マン・オン・ザ・ムーン』のメイキングだが、諸事情につき当時撮影された素材の多くがお蔵入りにされており、20年経ってようやく解禁されたというもの。

 アンディ自身はエンターテイナー、パフォーマーを自称してテレビの舞台に立っていたが、ネタの多くは舌っ足らずの声で「たんきゅう・べりまっち」といったりするだけで、他にはプレスリーのレコードに合わせて口パクしたり、『華麗なるギャツビー』を一冊丸ごと朗読したり、狂ったようにボンゴを叩く(だけ)・・・まるで面白くなかった。今ではファンの多くが「アンディ・カウフマンは面白くない。それが面白いんだ」とわけのわからない理由で支持されているのだが。しかしテレビ番組に出演して人気が出たアンディはトーク番組などに引っ張りだこに。あまりに忙しくて全部に出演できないので「俺の知り合いに面白いやつがいる。トニー・クリフトンっていうんだ」と友人を紹介した。
 トニーは酔っぱらって現れ、コールガールを脇に抱え「アンディなんか面白くもなんともない!あいつは最低だ!」とわめき散らした。酔っ払いの毒舌男としてトニーはアンディ以上に暴れまわる。そのトニーは、どう見てもヅラを被ってサングラスをかけたアンディにしか見えなかった。司会者も「あなたアンディさんですよね?」というとセットの横からアンディが登場!生放送中にトニーとアンディはつかみ合いのケンカを繰り広げる。トニーはアンディのブレーンであるボブ・ズムダが演じた。

「何これ?わけがわからない」

 アンディはあらゆる常識を破壊して暴れまわった。82年にはメンフィスで女性差別発言をしプロレスに挑戦、リングに女性をあげて勝ちまくった。「世界無性別級王者」を名乗り、誰の挑戦も受けると宣言。当時メンフィスで新団体CWAを立ち上げていたエース、ジェリー・ローラーを相手に戦って首の骨を折る重傷を負った。
 アンディは癌で早死にするが、それすら「どうせネタに決まってるよ」と信じてもらえなかった。実の家族まで彼の死を信じなかったぐらい。


 そんな誰にも笑ってもらえないアンディの生涯を描いた作品『マン・オン・ザ・ムーン』でアンディの役をコメディアンのジム・キャリーが演じた。当時のジム・キャリーは『エース・ベンチュラ』『マスク』などでヒットを飛ばしていたが、「下品な顔芸役者」としか認知されず、業界では嫌われていた。この作品にかけていたキャリーはアンディの芸を完コピしたビデオを送ってオーディションに勝ち残った。
 演奏家としての夢をあきらめて家族のために就職したキャリーの父親はその職で失業する羽目になり、一家はどん底の貧困に追い込まれる。キャリーは木を相手に独り言をいったりして「人を殺したくなるほど」絶望的な気分を忘れようとした

「アンディも同じようなことをしていた。笑ってほしいんだけど誰も笑ってくれない。僕はアンディなんだよ」

 撮影で完全に役になり切っていたキャリーはスタッフに「ジムさん」と呼ばれても「ジムって誰だ?僕はアンディだ!」と大声をあげた。トニー役で撮影をしている時もなり切って実際のトニーのようにアンディの悪口を言いまくり、時にはキャリーの悪口すら言った。紙袋を被ってスタジオに現れ「僕はバットマンだ!」と叫び、ユニバーサルの撮影所にスピルバーグのアンブリン社のオフィスがあるのを見つけると「会いに行こうぜ!」と乗り込んだ。

「大衆相手のクソ映画ばっかり撮ってないで、『ジョーズ』のころを思い出せよ!って言ってやるよ」

 幸いスピルバーグはいなかったので事なきを得たが、許可も取らずにカメラを回していたのでアンブリンの人間がカメラは止めてくださいと叫ぶのが映っている。監督のミロシュ・フォアマンはクランクイン2週間後に「君は何をやりたいんだ?わけがわからないよ」と泣きを入れた。『カッコーの巣の上で』『アマデウス』で二度アカデミー賞に輝いた巨匠が!
 フォアマンが匙を投げた現場でキャリーはアンディに、トニーになって暴れまわった。スタジオの外でもだ。『プレイボーイ』の編集者ヒュー・ヘフナーの『プレイボーイ・マンション』のパーティに招待されたときはアンディの代わりにトニーを行かせたが、ヘフナーはキャリーの変装だと思って歓待した。ところがその後本物のジム・キャリーが登場したので大騒ぎ。この時のトニーはボブ・ズムダ(今も健在)が昔のようにトニーを演じていたのだが、不審者としてトニー=ボブはたたき出されてしまう。悪ふざけもここに極まれり。
 ジェリー・ローラー本人がやってきてメンフィスのプロレスリングを再現する場面では当時のようにアンディになり切ったキャリーがローラーを罵倒しまくり、つれの彼女に水をぶっかける!スープレックスでアンディを投げる場面ではもちろん持ち上げた瞬間に撮影を止めて、スタントがその後を演じるわけだがキャリーはそれが不満で本当に俺を投げろと要求。拒否するローラーを「保険会社が怖いのか?」「根性なし!」と罵りだす。ついにブチ切れたローラーはキャリーをリング外で「制裁」する。かつてのメンフィスのように首を負傷して撮影がストップした様子は「ジム・キャリー、撮影中に負傷」と伝えられ、翌日テレビのカメラマンがスタジオの周囲を取り囲む事態に。「和解」を兼ねたテレビ番組でキャリーとローラーがトークした時もキャリーはローラーを煽りまくり、怒ったローラーがキャリーをビンタしてしまう。もちろん二人は打ち合わせの上で撮影しているのだけど、何も知らない周囲は唖然、茫然とするばかり。

 共演しているダニー・デヴィートやポール・ジアマッティもポカーンとしてるだけ。ただひとりアンディの彼女役で登場するコートニー・ラブだけはニコニコしてたけど(変人に付き合うのが慣れてるのかしら)。
 何が本当で何が嘘なのかわからなくなってしまうアンディの虚実をキャリーは完全に再現した。周囲も完全に巻き込まれてしまい、アンディの父親役を演じたジェリー・ベーカーがトレーラーハウスの中でキャリーを「息子のように」叱り飛ばす(何があったんだ)とアンディの実際の妹が「いつもアンディはあんな風に父に叱られていたわ」とキャリーのガチっぷりに本物の涙を流す。一体なんなの!!

 メイキング用に撮影された映像をユニバーサル側が宣伝にならないから回収すると言ってきたんだ!とキャリーは怒り心頭でボブに告げる。そりゃあこれ見たらキャリーは完全にキ〇〇イとしか思えないもんな。この映像が20年近く封印されてたのもわかるわ。ユニバーサル側の態度に憤慨するボブにキャリーは

「うっそだよ~ん!ダマされた?」

 一杯食わされたボブが大笑い。ジム・キャリー、何がやりたいんだよ!




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