2019年10月06日

一行さんにツンツンされたい未来『HELLO WORLD』

一行さんにツンツンされたい未来『HELLO WORLD』

 仮想現実の世界を舞台にしたSFボーイ・ミーツ・ガール。監督は『ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール-』の伊藤智彦、脚本は『[映] アムリタ』5部作、『ファンタジスタドール イブ』の野崎まど、キャラクターデザインは『けいおん!』の堀口悠起子というゴールデントライアングル。

 2027年の京都に住む男子高校生の直実(CV:北村匠海)は主体性のない、優柔不断で決断力のないダメ男子。オタクが見るアニメ作品における典型的な主人公だ。「イヤ」といえない性格なのでクラスで図書委員の仕事を押し付けられてしまう。しかし図書委員の顔合わせの場で異常にキラキラしていて、誰もが一目ぼれする美少女、勘解由小路三鈴(まったく読めないと思うけど、かでのこうじ・みすずと読む)に出会う。何か話すとキラキラッ☆とエフェクトがかかる(笑)美少女(ちなみに声は福原遥!)の勘解由小路さんとLINEの交換をしようとするも、同じこと考えている男子生徒たちに阻まれて轟沈。

 そんな冴えないダメ野郎の直実はある日、フードを被った怪しげな男(CV:松坂桃李)に出会う。彼は10年後(2037年)の世界から来た直実本人=ナオミだという。そして衝撃の事実を伝えるのだ。

「この世界は現実ではない。未来の人間がつくった過去の記録なんだ」

 京都の歴史と街を保存する計画、クロニクル京都の一環として生み出された記憶装置「アルタラ」によってシミュレートされた過去の記録に過ぎないのだと。
 アルタラは時間の概念も記録できるので、再現された2027年の直実と2037年の直実はほぼ同一の存在なのだ。この説明じゃわかりにくいという人は『マトリックス』を思い出してくれ。君が見ている現実は機械につながれて見せられている夢に過ぎない!

 10年後からやってきたナオミの目的は三か月後に直実の恋人となる女子との思い出を残したいというもの。それってまさかキラキラ女子の勘解由小路さんですか!?といきり立つ直実。

「いや、交際するのは同じ図書委員の一行瑠璃(CV:浜辺美波)だ」

 一行さんはキラキラ女子の勘解由小路さんとは違っていつもむすっとして無表情で、ツンツンしてる。直実と違ってイヤなことはイヤという、正反対の性格だ。ええ、一行さんは綺麗だとは思いますけど、僕のタイプじゃないなあ・・・とさえないくせに贅沢な直実を軽く叱りつけておいてナオミは彼女と交際を始めて最初のデートで、落雷事故に遭って命を落とす未来を告げる。一行さんの「事故で死ぬ」という未来を回避し、せめて仮想現実の世界だけでも幸せになる姿が見たい、というナオミに協力することにした直実は、アルタラ内で世界の記録を書き換えることができる「神の手(グッドデザイン)」を渡され、これを自由自在に使いこなせるようにした上で仮想現実の中で記録を書き換えた時に修正プログラムが働くので、この力でそれと戦うようにと。

 こうして直実はナオミの言われるがままに「一行瑠璃と親密になり、交際しやがて事故の日を迎える」という記録を再現していく。直実にとっては未知の体験だがナオミには「過去の再現」なので、攻略法がわかっている恋愛ゲームのようにトゥルーエンディングを目指して、ナオミの勧めるがままに選択肢を選んでいく直実。例えば親密になる最初のきっかけ、通学バスの車内で直実は読んでいた文庫本を落とし、それを拾った時にバスが揺れ頭が一行さんのお尻に当たってしまう。

「・・・最低です!」

 ビンタされた直実にナオミは「これで二人の距離が縮まった!」いや、全然縮まってないですから!むしろ離れてますよ!
 まあ、ラブコメにおける男女の出会いとしては100%完璧ですが・・
 こんな感じで徐々に二人は距離を縮めていき、一行さんのことを常にツンツンしている近寄りがたい女子だと思っていたけれど、彼女は教室にいない間にクラスメイトが自分の椅子に座っていた時には「それ、私の椅子なんだけど」ということができるし、購買で昼食のパン争いの場で「ねじりん棒ください!」とハッキリ口にできる。直実は孤独なだけだが、一行さんは孤高の存在なんだと。
 この一行さんのツンツンぶりは徹底していて、ラストまでデレるそぶりを見せないのだ。もうツンデレで喜んでいる場合ではない。ツンツンしかない!元祖ツンデレ声優・釘宮理恵が本作でどのような存在なのか確認してもらいたい。


 事故が起きるまでの過程で、あえて彼女を悲しませるようなイベントをこなしていかなくてはならない状況に不満を持つようになる直実は「これも死を回避するために必要なことだ」と冷静に事故までの日々を再現するナオミの態度に疑問を抱くようになる。直実は自分が本当に一行さんのことを好きになっていることに気づくのだ。

 そして花火大会の日、一行さんが死ぬ未来を回避しようと起こした行動で、アルタラの修正プログラムが発動する。「神の手(グッドデザイン)」によって妨害をはねのけ、一行さんを死の運命から救うことに成功するが、ナオミの本当の目的が明かされる。実は2037年の世界に一行さんは脳死状態のまま生き続けており、現実世界と同期しているアルタラの仮想現実内で一行さんの死を回避すれば、現実世界で意識不明の一行さんの記憶が上書きされてよみがえるはず・・・!
 そのためには2027年の仮想現実から一行さんの記録を丸ごと2037年にもっていかないといけないので、直実がいる2027年の世界は崩壊してしまう。このたくらみはまんまと成功し、2037年の世界で一行さんは目を覚ます。

 しかし蘇った一行さんはナオミを「あなたは堅書ではない」と拒絶。世界は崩壊をはじめる。ナオミが現実だと認識していた世界もまた、2037年の世界をシミュレートした仮想現実に過ぎなかった・・・という入れ子構造の物語を極めてわかりやすく描写しており、『ソードアート・オンライン』で現実の世界で眠り続けるアスナを仮想現実の世界で救えば眠りから覚める・・・という展開にも似ている。伊藤智彦監督にとってこだわりのある世界の再現であったといえましょう。
 
 ソーシャル化によって個人と情報は密接につながって、世界を構築しているのが現代社会なので、もはや仮想現実は仮想とはいえないのでは?『HELLO WORLD』はそんな社会の到来を幸福感いっぱいに描いた作品なのです。

 僕も一行さんにツンツンされたいんや!でも現実にああいう子がいたら大変そうですねえ・・・やっぱりアニメの方がいい!






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Posted by 縛りやトーマス at 03:31│Comments(0)映画アニメVR
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