2020年03月30日

筋少推し映画 サモサ!『TARO! TOKYO魔界大戦』

筋少推し映画 サモサ!『TARO! TOKYO魔界大戦』

 90年代には『女バトルコップ』『ゼイラム』『ミカドロイド』『ケルベロス-地獄の番犬』『ヒルコ/妖怪ハンター』といったゴジラでもウルトラマンでもライダーでも戦隊でもない、独自の特撮作品にが成熟したビデオ市場に数多く投入されていた。
 そんな独自路線の特撮作品のひとつとして91年に公開されたのがこちら『TARO! TOKYO魔界大戦』だ。日本人なら誰でも知ってる昔ばなし「桃太郎」をベースに、現代を舞台に新興宗教団体が蘇らせようとする「鬼」と桃太郎の遺伝子を受け継いだ少年が戦うという、既存のヒーローものにホラーテイストをプラスした意欲的な設定だ。
 監督は『ウルトラマンティガ』『ウルトラマンダイナ』『電光超人グリッドマン』などで知られる石井てるよし、脚本はこれまたティガ、ガイアといったウルトラシリーズや『エコエコアザラク』などホラー作品で知られた小中千昭。


 物語は現代のライブハウスから始まる。中学生ミュージシャンのオーディション会場に出演しているバンドが筋肉少女帯の『これでいいのだ』を歌い上げる。なぜ・・・筋少?なぜ・・・これでいいのだ?

「俺、めっちゃ緊張してる~!」

 デビューを目指す弾き語りシンガーの14歳、中臣太郎(藤原秀樹、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のトリケラレンジャー、ダンの人)は彼女兼マネージャーの小林美香(森山和美)に髪をいじってもらいながらも全然緊張してない様子。出番が近づくも、直前にステージに上がったキーボーディストの堀雅之(丸典膳カイ)の歌に打ちのめされる。彼のステージがキーボードを小室哲哉みたいに組んでるの。素人バンドのオーディションとは思えん。
 太郎は落選。同様に落ちてしまった雅之と仲良くなる。ちなみに彼のキーボードは個人所有の持ち込み。ボンボンかよ!!
 帰りに太郎は芸能事務所のスカウト、葛城(小野みゆき)に「あなた、歌はイマイチだけどルックスはいいわ」と褒められ(?)、名刺を渡される。美香はうさんくさいといって葛城を信用しない。

「14歳じゃあまずアイドルでしょ、それで夜ヒットとかに出て売れた後でロックで世界進出します、っていえばいいのよ。私に任せといて」

 という美香の言い方がいかにも90年代のJCって感じです。二人の前に突然お堅いスーツ姿のサラリーマンがやってきてよくわからないことをつぶやいて去っていく。怪しい

 テレビディレクターの男、紀本肇(三浦洋一)が仕事をさぼって外で謎の男に遭って情報を仕入れている。「お互いスパイごっこはやめましょうよぉ~」と。なんか怪しい。

 雅之の家に遊びに行った太郎が、雅之のお姉ちゃんに歓迎されるが、お姉ちゃんは右手を左胸の前にもっていって横向きのメロイックサインをつくって部屋を出ていく。絶対怪しい。最近街で流行っている新興宗教・信輝会の挨拶らしい。「ああいうの嫌いなんだよな~だってうちは浄土真宗だぜ?」

 結局スカウトを受けることにした太郎は雅之と一緒に事務所へ。履歴書に「尊敬する人:ボン・ジョヴィ、好きなミュージシャン:筋肉少女帯」(また筋少かよ!)とペンを走らせる太郎に「おい、真面目に書けよと怒る雅之。筋少じゃいけないのかよ!!
 太郎を出迎えるのはオーディション番組のプロデューサー高松(佐々木功、めっちゃエエ声なので、もう絶対に怪しい

「ウチは大手の代理店の系列なんで、メディア関係はほぼ思い通りにいくわけ」

 と代理店とメディアの癒着をあからさまにする佐々木功!

「ただしタレントとして成功するには3つの要素が必要だ。ルックス、音楽的な才能、もっとも重要なのは思想だ!カリスマティックな支持を受けることだ。そして大きなインパクトを与えることができる。それこそ真のスーパースターだと思わないかね?それはつまり・・・心の問題っていうことさ」

 とエエ声で立て板に水のようにしゃべられてその気になりかける視聴者をよそに「一曲歌ってもらおうか」とオケを聞かされた太郎、オケのテープから謎のメッセージを受け取って目がうつろになり、何事かを呻きはじめる。その場は雅之に助けられたのだが・・・やっぱり怪しい!


 雅之のうちで功からもらったオケテープを聞いていると、また太郎が取りつかれたようにおかしくなる。絶対怪しいよ!

 信輝会の講演会場で熱弁を揮う信徒(またエエ声の小林克也。この作品ではエエ声の人は怪しい)。信輝会の代表である聖会主のそばには竹中直人(これまた怪しい)がいてなにごとかを耳打ち。一瞬にして実は信輝会を操っている実態は竹中直人なんじゃねーの?と謎解きのヒントを与えるわかりやすいシーン。その会場で来場者のリストを盗み見したり、小型カメラで写真を撮りまくっている紀本であった。

 場面かわって店内BGMが筋少の「これでいいのだ」な楽器店でデートする太郎と美香。どこまで筋少推してんねん!二人は佐々木功の芸能事務所を怪しんで名刺の電話番号にかけても通じず、ビルにいけば空き家だった。怪しさ満点。そのころ紀本はアメリカ大使館員から情報を仕入れていた。何してるのこの人。


 信輝会の新施設建築現場で変な人たちから付け回される太郎と美香。逃げ切った先の喫茶店で急にスプーンを曲げてしまう美香。なんで??

「でもさ、スプーン曲げただけでエスパーですって恥ずかしくない?」

 確かにそうだけど、これ、何のシーンですか??直後、喫茶店のBGMのせいでまたおかしくなる太郎。雅之の家にいけばそこはすでに信輝会のメンバーに囲まれていた。こっそり抜け出した雅之と合流するも追い回されてしまうが、紀本のオープンカーによって脱出。紀本は信輝会のことを調べていた途中で太郎たちのことを知ったのだった。雅之は紀本をスパイと疑っているが・・・

 例のオケテープは雅之が調べている途中で切れてしまった。詳しく調べるには自衛隊のコンピューターに電話回線を使って忍び込むしかない。雅之が「俺、そういうの得意なんだ!」と突然スーパーハカーを自称しはじめる。三人はビルに忍び込んでそこからハッキングを仕掛けることに。警備員の見回りのスキをついて侵入。その警備員が・・・大槻ケンヂ!!これが謎の筋少推しの理由だったのか!?

「俺にカレーを食わせろぉ~俺はいつでも辛さにこだわるぜ~サモサ!」

 ヌンチャクを振り回しながら仕事するオーケン。怪しい(笑)。

「オーケイ!なんぴとたりともこの部屋には入れん!」

 といってるその後ろを太郎たち三人がすでに侵入

「セニョールセニョールセニョリータ~おいらはメタルの警備員~おふくろ!セニョールセニョールセニョリータ~いとしのあの娘にボンジュール~異常なぁしっ!」

 あんたが異常だよ!!オーケンが出演したのはこの映画のポスターデザインが永井豪なので、その関係と思われ。この演技は「期待に応えようとしてやりすぎた」結果なんだそうです。このン十年後に仮面ライダー映画で「ファンキーだろぉ!」と叫んでましたが、この時から演技が変わっていません

 ハッキングの結果、古代カムラ語のメッセージがオケテープに隠されていることを突き止める雅之。自衛隊のコンピューターは優秀だな。メッセージ自体が何を表しているのかはわからないので、美香が「こういうのに詳しいおじさんがいるので聞きに行こう」と向かった先が谷敬が店長のホラーショップ。普通は薄暗い照明で魑魅魍魎がうごめいているような店にするのに、店内がやたら明るくておしゃれでさわやかそうな若者が客だったのが石井てるよし監督のセンスかしら。
 民間伝承に詳しい谷敬店長はメッセージから「これは鬼の概念について書かれたもの」と推察。桃太郎というのは鬼を鎮める血筋の総称だったのではないか、という新解釈を与える。つまり太郎は桃太郎の血筋の末裔だった!?

 この後、信輝会の信者によって美香がさらわれ、太郎は自転車で爆走して車をおいかけ高速道路に侵入。なんとこのシーン、無許可のゲリラ撮影!普通に車が走っている真横を太郎が自転車でぶっちぎるという、『フレンチ・コネクション』ばりの名場面。二台の車が横にステアを切って後続車をブロックする場面あるんだけど、後続車、事情を知らない一般車かな。だとしたら随分恐ろしい撮影だな!B級映画かと思ったら大胆すぎやろ。

 美香が信輝会本部にとらわれていることを信者である雅之の姉から聞いた二人は紀本が止めるのも聞かず、金属バットを手にチャリの2ケツで助けに向かう。夜の街を『日本インド化計画』を歌いながら・・・

サモサ!サモサ

 いやあ~こういうときに筋少のBGMってのは沁みるねえ~

サモサ!サモサ!


 竹中直人の正体は鬼の復活を目論むナチスみたいな組織(ナチス風の軍服を着てるのだが、モロにナチスだといろいろアレなのでごまかしている)に所属するローカイ大佐だった。鬼をよみがえらせるためには太郎の歌が必要。美香が人質に取られているので言うことを聞くしかない太郎は渋々歌って鬼が蘇る。が、太郎がいたことで桃太郎の血筋を根絶やしにしようとした鬼がコントロールを受け付けない!

 若狭新一デザイン・造形の鬼は全長3メートルで中に入ったのはミスターレッド・新堀和男。全身が映るスーツは股の部分に新堀さんが入って膝までの部分に足が入り、脇からやや下につけられた腕の部分に手を通して操縦。全身が映る場面はややもっさりした動きなのはそういう理由からです。しかしミスターレッドが入っているというだけで凶暴さの中に優雅さのエッセンスが取り込まれているように見えてくるのだから不思議です。

 後半はやや理解に苦しむ展開(なぜ美香が太郎のバットを七支刀に変えられたの?)があるものの、ヒーローものとオカルトの華麗な融合を果たしたジュブナイル作品として完成されていて、90年代の独自路線を目指した特撮作品の中でも純日本風のファンタジーとして異色を放つ隠れた傑作なので、DVD化が望まれるところ。オーケンの演技からも目が離せない。セニョール!サモサ!




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