2020年04月07日

エディ・マーフィ大復活『ルディ・レイ・ムーア』

エディ・マーフィ大復活『ルディ・レイ・ムーア』

「俺の名前はドールマイト。クソを消すのが俺の仕事だ」

 70年代に活躍した黒人ラッパー、ルディ・レイ・ムーアの伝記映画『ルディ・レイ・ムーア』はアカデミー賞にノミネートすら噂され(実際は未ノミネートに終わった)、ムーアを演じたエディ・マーフィはラジー賞の「名誉挽回賞」に選ばれた。本作のエディはここ20年ぐらいの不発ぶりを完全払拭し、なんなら歴代ベストワークではないかと思われるキマリっぷりを見せてくれた。ルディ・レイ・ムーアってなんなんだ??


 70年代のロサンゼルス。レコード屋の副店長(という肩書だが実際はアルバイト)をしているルディ・レイ・ムーアは田舎から飛び出して歌手として成功を目指す男だが、すでに中年。レコードはまったく売れずナイトクラブの前座でスタンダップ・コメディをやっても誰も笑ってくれない。俺はこのまま埋もれてゆくのか?

 レコード店の営業の邪魔をする浮浪者のリコ(ロン・シーファス・ジョーンズ)がやってきてムーアは彼を追い出すが、すごい勢いで下ネタをかます。それは往年の黒人コメディアン、ドールマイトのネタだったがそれを聞いたムーアはドールマイトのネタを今風にアレンジすれば受けるんじゃねえか?とリコに酒をおごってネタを書き留める。ナイトクラブの前座でムーアは巨大なアフロヘアのヅラをかぶり、ド派手なスーツに身を包んだポン引き風の衣装で“ドールマイト”を名乗ってうんと濃い下ネタをまくしたてる。

「親父はイカレチンポ、おふくろは腐れ娼婦!そしてあんたはケツで商売しているエロライオン!」
「妹さんに至っては凄腕テクニシャン、ミミズのチンポをおしゃぶりできるそうです!」
「そいつはおじさんを手籠めにし、おばさんと姪御さんにも手をかけた!気を付けないと次はおばあちゃんまで毒牙にかかってご昇天!」


 このネタがバカ受け。“ドールマイト”の仮面をかぶったムーアは一躍スターダムに駆け上がる。下ネタだらけのレコードは「こんな下品なの売れない」とレコード会社にハネられたので、自主制作。そうしたらこれも爆発的ヒットとなり、メジャーから全米流通に。

 大金が転がりこんだムーアは気前がよくなり、友人たちを食事に誘って「今、受けてるらしいぜ」という映画を観に行く。それはビリー・ワイルダーの『フロント・ページ』。ところがこの映画がまったく面白くなかった!

「これの何が面白いんだ?黒人はちっとも感情移入できねえ!俺たち黒人が面白いと思う映画がねえんだ!」「黒人がスカッとして、笑える映画をつくるしかない!」

 ムーアはドールマイトを主演にした映画製作に挑む。内容は?カンフーがあって売春婦が出て、おっぱい、バイオレンス・・・

 折しも時代は70年代のブロックプロイステーション全盛期。『黒いジャガー』『スウィート・スウィート・バック』『スーパーフライ』『コフィー』といった黒人を主役にしたB級映画が話題になっていた。映画に出る黒人といえば大金持ちの家で雇われるボーイか靴磨きしかない時代にブラックプロイステーションはイカす黒人がちょっとワルなダーティー・ヒーローを演じて白人たちをぶちのめす映画で活躍していた。
 今だ苦難にあえぐ黒人たちに夢と希望を与えたい!ムーアは映画製作に挑むが、スポンサーは現れない。「君は狭い黒人コミュニティの中だけのスターなんだ。全国区ではない」と厳しい現実を突きつけられる。
 ムーアはあきらめない。私財をなげうち、レコードの権利まで担保に入れて自主映画『ドールマイト』(1975)を作る。
 これで俺もリチャード・ラウンドトゥリーやメルヴィン・ヴァン・ピープルズのようなスターになるのだ!しかし彼には二人にあった決定的な要素が欠けていた。ラウンドトゥリーやピープルズは二枚目のルックスがあったが、ムーアの見てくれはただのさえない中年だったからだ(しかも腹が出ていた)。
 さらにドールマイトが劇中で披露するカラテ・アクションはヘナチョコで、演技も大根。本人と周囲の友人たち、若手スタッフ(UCLAの学生)らがカットがかかる度

「これは最高傑作だ!」

 と騒いでるのがなんとも。 劇中見せ場になるベッドシーンの描写は『ドリフ大爆笑』も底抜けで、ベッドで白人女を突き上げる衝撃で部屋中がギシギシいって、天井が落ちてきたと同時に昇天!ダメだこりゃ!!

 出来上がった映画はもう、本当に・・・どうしようもない・・・出来で誰も配給を買ってくれない。ムーアと友人たちだけが史上最高の傑作が誕生したと大騒ぎしていたのだ(クソを消す以前にこの映画がクソだった!)。このやり取りは駄作映画界の『市民ケーン』と言われたトミー・ウィゾーの『ザ・ルーム』の内幕を描いた『ディザスター・アーティスト』みたいで爆笑必至。どう考えてもハチャメチャな作品になるとしか思えない『ドールマイト』をムーアだけは絶対傑作と信じて疑わなかった。この自分の才能を信じて疑わない、異常なまでのポジティブさが彼の成功を支えたといっても過言ではなく、「ポジティブな黒人」というキャラで80年代に大スターとなったエディ・マーフィとかぶって見える。長い落ちぶれ時代を経験したエディがムーアを完璧に演じられたのもよくわかる。

 ここ20年は落ちぶれて半ば引退状態に追い込まれていたエディはこの作品に手ごたえを感じて、かつての大ヒット作『星の王子様 ニューヨークへ行く』のパート2をこの映画のスタッフと制作すると発表。エディの快進撃再びか!?

※映画はネットフリックスで配信中!





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