2020年08月26日

一体何がしたいんだよ!『殺しの分け前 ポイント・ブランク』

一体何がしたいんだよ!『殺しの分け前 ポイント・ブランク』

 映画というものを見続けていると、どうにも「意味の分からない映画」というものに出くわすことがある。そういう時はかつての水野春郎先生のように「病んだアメリカ社会を表しているんですね」で済ませることにしている(それで大体済む)。アメリカ映画でなかった場合は国名を変えるだけでいい。

 1965年、当時ビートルズに匹敵する人気バンドとして売り出されていたデイヴ・クラーク・ファイブが出演、音楽、主題歌を手掛けた『5人の週末』(原題:CATCH US IF YOU CAN)で長編デビューしたジョン・ブアマン監督の第2弾。主演は西部劇映画で活躍したタフガイスター、リー・マーヴィン。原作はリチャード・スタークの『悪党パーカー/人狩り』。

 銃声が鳴り響き、初老の男(リー・マーヴィン。初老と書いたが当時のマーヴィン、まだ40代前半である)が倒れている。

 回想。初老の男はウォーカーという名前である場所で人波にもまれている中、友人マル・リース(ジョン・ヴァーノン)に激しく抱き留められ押し倒される。人の足に踏まれそうになりながらウォーカーはリースに懇願される。
「頼む!俺を助けてくれ!」
 リースはある組織の現金取引現場を襲い、金を強奪しようと企む。理由は?特に説明されない。これは簡単な仕事なんだとだけ言われる。取引現場であるアルカトラズ島の監獄に向かった(向かった、というが向かうまで場面はなく、気が付けばそこにいた!)リース、ウォーカーとその妻リン(シャロン・アッカー)。
 襲撃は成功するが金を計算していたリースは93,000ドルしかないと喚き出し、ウォーカーを撃って密かに関係していたリンとともに逃げ出す。

「これは夢なのか?」

 アルカトラズ島の遊覧船で、実は生き延びていたウォーカーはヨスト(キーナン・ウィン)と名乗る男からリースは羽振りの良い生活をしていて、リンとともに暮らしていることを告げる。っていうかヨストって誰?
 ヨストからリースとリンが住む住所を教えてもらったウォーカーは93,000ドルを取り戻すために乗り込む。乗り込んだヤサにはリースの姿はなく、リンは3か月前から帰らなくなったと。裏切ったことを詫びるリンは翌日、ベッドの上で冷たくなっていた。だが次の瞬間ベッドから妻の死体は消える(?)。
 家にリースからの金を送り届けに来た男から金を送るよう命令しているのはビッグ・ジョンまたの名をジョン・ステッグマン(マイケル・ストロング)という中古車業の男だということを聞いたウォーカーはいつ出来たのかわからない妻の墓の前に立つ。
 ステッグマンの店で試乗したいというウォーカーはステッグマンを乗せて車を暴走。めちゃくちゃにした後でリンの妹、クリスの店の場所を聞き出す。

 たどり着いた先はリンの妹、クリス(アンジー・ディキンソン)の家。クリスはリースが所属する組織に恋人を殺され、彼が所有していたナイトクラブの経営を引き継いでいる。リースはクラブもクリスも手に入れようとしている。ウォーカーは彼女を使ってリースの高級マンションに乗り込む。襲撃を予想して警備が敷かれているが、アホのように警備が緩く、エレベーターで部下がいるフロアについてしまったウォーカーに連中が後ろ向きでしゃべっているため「志村、後ろ!後ろ!」状態で気づかずに見逃す、という痛恨のミスをする場面はなんなんだ?ギャグなのか?

 リースは金を返せというウォーカーの要求には応えられない。金はすべて組織に収めているからだ。組織の幹部フェアファックス、ブリュースター、カーターの名前を聞いたウォーカーは直接乗り込もうとする。リースは俺に任せてくれれば金は取り戻す、俺を信じてくれ、親友だろというが、同じ言葉をアルカトラズ襲撃の前に聞いて口説かれていたウォーカーにとってそれは嫌な記憶を思い出されるだけだった。諍いの果てにリースはテラスから転落死。リースの墜落死現場に群がる野次馬の中にはヨストがいた。ヨストはウォーカーに「カーターに近づこうとするなら手を貸す」だから、こいつ一体なんなの??

 パーティー会場で客のフリをしてカーターに接触した(そんなことで近づけるのか。警備もへったくれもありゃしない)ウォーカーは93,000ドルの請求をする。金を渡すつもりはないカーターはステッグマンを使って現金の引き渡しを提案。ステッグマンが引き渡し場所に行ったのを見届け、ウォーカーはオフィスを襲ってカーターを拉致。そのまま引き渡し場所へ直行。取引現場で待つステッグマンの元にカーターを放り出す。

「やめろ!わたしだ!カーターだ!」

 狼狽するカーター。するとカーターに雇われていたスナイパーが雇い主と気づかずカーターを射殺。次いで逃げ出そうとしたステッグマンも。彼は初めから消される予定だったのだ。罠だと悟っていたウォーカーは残りの二人、ブリュースターとフェアファックスから金を回収するしかない。

 ヨストからブリュースターは明日会議のために自宅に帰ってくると教えられる。

「自宅はどこだ?」
「今私たちが立っているここだ」

 プール付きの豪邸!いやここはどこなんだよ!なんで二人がここにいるんだよ!

 この映画、こんな感じで突然場所を移動したり、そこに至るまでの過程がバッサリカットされているのだ。これは最初の脚本を「あまりに酷い」と判断したブアマンとマーヴィンが余計だと感じた部分を全部切ったせいだという。最低限必要な、場所を知る→移動→到着といった流れがワープでもしたかのように編集されていて、大胆な省略とかうレベルではない。わざと意味不明にしているとしか思えない。
 クリスとウォーカーがケンカを始める場面ではクリスが嫌がらせとして家じゅうの電気製品を動かし、ウォーカーがひとつひとつ消して回るというこれまた意味不明なシーンが延々と続く。

 帰ってきたブリュースターが

「お前は一体何がしたいんだ!」

 と叫ぶがこの映画のことだよ。一体何がしたいんだよ!

 お前に渡す金なんかない、93,000ドルだって?そんな金は見たこともない!フェアファックスは小切手の署名係でやつに金を動かす権限などないといい、フェアファックス本人に電話をかけても断られた。サンフランシスコ行きを提案するブリュースター。それはアルカトラズで行われている現金の取引だ。

 現金の取引をブリュースターに任せ、ウォーカーは離れた場所から見守る。ブリュースターは射殺され、ヨストが姿を見せる。彼こそがフェアファックスであり、彼が組織のすべてを手に入れようとしたのが真相だったのだ。フェアファックスは肝心なところで姿を見せない用心深さと頭の切れるところを買って相棒にならないかと持ち掛けるがウォーカーは姿を現さず闇に消える。

 えっ93,000ドルはいらないのかよ!じゃあ今までやってきたのはなんだったんだ!?


 ヌーヴェル・ヴァーグの影響を受けたというブアマンはそれまでの常識を覆す大胆な演出やカットを散りばめてヌーヴェル・ヴァーグの末期1967年に『殺しの分け前 ポイント・ブランク』を送り出した。ニューウェーブを終わらせたのはブアマンだった!

 そして彼は懲りずに『未来惑星ザルドス』(1974)を世に放ち、世間を唖然とさせるのでした。




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