2020年09月02日

ルーシー・リューに殴られたい『ペイバック』

ルーシー・リューに殴られたい『ペイバック』

 以前紹介した『殺しの分け前/ポイント・ブランク』と同じ原作『悪党パーカー/人狩り』の映画化。リメイクである(本稿では便宜上、「前作」と表現する)
 前の映画は一体何がしたいのかよくわからなかったが、本作は監督デビューとなったブライアン・ヘルゲランドが意味不明なシーンや展開の数々に意味や整合性を持たせようとして苦労した結果、やっぱりよくわからないのだった。

 ポーター(前作のウォーカーにあたる人物、演じているのはヘルゲランドと『陰謀のセオリー』以来二度目のタッグとなるメル・ギブソン)は背中に銃弾を食らう怪我を負い、闇医者に頼んで銃弾を摘出。5か月間の養生生活に入る。復帰したポーターは無一文なので身障者の物乞いから小銭を巻き上げる。ひでえなあ~と思ったら「おい!なにしやがる!」と起き上がりポーターに食って掛かる。身障者のフリをしていただけだった!
 その後もポーターはダイナーの支払いをケチって煙草をくすねたり、スった財布から奪ったクレジットカードでスーツ、高級時計を購入、質屋でマグナムと交換。レストランでカードが止められているとわかると食い逃げするという小悪党ぶり。

 5か月前、ポーターは友人ヴァル(グレッグ・ヘンリー。前作のリースにあたる人物)の頼みで集金屋の中国人マフィアを襲って現金を奪う計画を実行。あっさりと成功したものの、奪った金が14万ドルと知るとヴァルは「これじゃ足りない」と言い出し、計画に参加していたポーターの妻リン(デボラ・カーラ・アンガー)が裏切りヴァルの銃弾に倒れるポーター。ヴァルはポーターが娼婦のロージー(マリア・ベロ。前作のクリスにあたる人物)と浮気をしている証拠を押さえ、リンの裏切りを誘発していた。

 死なずに生き残ったポーターは友人と妻への復讐、そして自分の取り分だった7万ドルを回収するために行動を開始するのだった。
 リンの居場所を突き止めるがヴァルは3か月前にいなくなり、リンはドラッグ中毒になっていた。リンはその夜オーバードーズで亡くなってしまう。リンの家にヘロインを持ってきた使い走りからアーサー・ステッグマン(デヴィット・ペイマー)という男の情報を聞いたポーターはステッグマンのオフィスを襲撃。併設されていたビリヤード場(実は賭博場)
には二人の悪徳刑事ヒックス(ビル・デューク)とフィル(ジョン・グローヴァー)がいてポーターをけん制する。
 口の堅いステッグマンに「ポーターが行くと伝えろ」と脅しをかけた後、浮気相手のロージーの元へ行き、「組織」の娼婦としてヴァルに買われ酷い暴力を振るわれたこともあるロージーからヴァルのマンションを聞き出す。


 この辺りまでは前作とほぼ同じ内容をなぞっているが、ここからヘルゲランドの悪ノリにも似た実力が発揮される。ヴァルはマンションで中国人のコールガール、パールと「お楽しみ」をするのだが、このパールがサディスティックなSM嬢で、ヴァルが何か言ったら「口答えするんじゃないよ!」と腹パンをぶち込み、蹴りを入れまくる!ヴァルは女を平気で殴るようなDV野郎なんだけど、殴られるのも大好きって感じであえてパールに逆らいながらご褒美をもらってご満悦。パールを演じるのはルーシー・リュー。本作の公開後、彼女に殴られたい妄想に身もだえする観客が続出したという・・・

 お楽しみの最中に乗り込んだポーターはパールの代わりにヴァルをボコボコにして「7万ドル返せ!」と迫る。ポーターのバイオレンスぶりを気に入ったパールが「遊ばない?」と誘ってくるのおかしすぎる。

 ヴァルは「組織」の幹部、カーター(ウィリアム・ディヴェイン)に助けを求めるが自分でケリをつけろと言われるだけ。かつてタタキをした相手の中国人マフィアにタタキの犯人はポーターだと告げ口。あわれ一貫の終わりか?というところで悪徳刑事二人が助けに入る。といっても彼らの目的はポーターが手にする「組織」の金だ。

「14万ドルぐらいで何を必死になってるんだ?」
「違う!7万ドルだ!」

 劇中、何かある度に14万ドルじゃねえ7万だといちいち訂正するポーター。前作より少ない金のためになぜ命を張るのか?冒頭でわかるとおりポーターはしょせん小悪党なのである。ヘルゲランドは悪徳刑事二人や彼らに協力してお小遣いをもらおうとするステッグマンといったさらにセコイ連中を配しておいて、ポーターを「こいつらよりはまだマシ」とでも思わせようとしたのだろうか。

 ロージーに暴力を振るうヴァルを射殺(前作の主人公ウォーカーは自ら手を下した相手は一人もおらず、周囲の人間を使って殺しを決行していた。それがウォーカーの神秘性につながっていたのだが・・・自分で殺せるのなら、さっさとそうしろよ!)したポーターは尾行していたカーターの部下が乗る車のオイルホースを切って爆死させる。真下でホースを切られるまで気づかない連中、間抜けすぎ!
 ポーターは悪徳刑事のバッヂをスり、マグナムにヒックスの指紋をつけさせヴァルの殺害現場に置いていくというトリック(?)で連中を排除。この辺は前作のウォーカーのような自ら手を下さない殺しのテクニックとして披露されているのだが、じゃあヴァル殺しや車の爆発も自分でやらずにうまく処理してほしかった。中途半端でしょ!

 カーターを自ら射殺(だから、自分でやるなって!)したポーターはボスのブロンソン(クリス・クリストファーソン)と幹部のフェアファックス(ジェームズ・コバーン)を誘い出すためにブロンソンの一人息子を誘拐する。フェアファックスからも「14万ドルぐらいで・・・」と言われ「だーかーら!7万ドルだっつーの!」と切れるポーター(笑)前作にもあった場面だが、あちらはその金額が男として決して譲れないプライドのようにされていて、美学(まったく無駄な)を感じたが、こんなにしつこくやられたらただのギャグだよ。
 息子を拉致したロージーが待っている場所とそこに向かうブロンソンたちが交互に描かれる場面はいかにもヘルゲランドといった演出だが(実は違う場所だった、というオチ)、小賢しい感がすごい。7万ドルも女も手に入れて大成功ー!といった結末にはもう何の感情も沸かない。


 実はこの映画、ヘルゲランドが完成させた初期版では前作に近いテイストだったそうですが、出来に納得できないメル・ギブソンが『マッドマックス2』『サンダードーム』のテリー・ヘイズに後半部分をリライトさせて撮り直している。ギブソンは「もっと愛される男が主役じゃなきゃダメだ」といったと言われ、だから最後に何もかも得るオチになったのかも。確かに前作はまったく意味不明だったからギブソンのお気に召さないのはわかるけど、このオチじゃあ何もかも台無しだよ・・・
 せっかくの初監督作をめちゃくちゃにされたヘルゲランドの心境やいかに!UK盤BRにはディレクターズ・カットとして収録されているそうなので、日本版の登場に期待します。




同じカテゴリー(映画)の記事画像
階戸瑠李さんの勇姿を忘れない
一体何がしたいんだよ!『殺しの分け前 ポイント・ブランク』
新世界国際劇場で祝祭がはじまる
Disney+の独占ビジネス
俺はKGBだ!『痴漢電車 満員豆さがし』
2世タレントサメ映画『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
同じカテゴリー(映画)の記事
 階戸瑠李さんの勇姿を忘れない (2020-08-31 23:26)
 一体何がしたいんだよ!『殺しの分け前 ポイント・ブランク』 (2020-08-26 05:04)
 新世界国際劇場で祝祭がはじまる (2020-08-15 08:58)
 Disney+の独占ビジネス (2020-08-10 00:31)
 俺はKGBだ!『痴漢電車 満員豆さがし』 (2020-07-30 11:40)
 2世タレントサメ映画『海底47m 古代マヤの死の迷宮』 (2020-07-27 14:41)

Posted by 縛りやトーマス at 14:17│Comments(0)映画レンタル映画館
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。